金属の中が虫歯になる理由
保険治療で入れた金属が突然外れてしまったこと、ありませんか?そんな時に歯科医院に言ったら、「虫歯になっていますね」と説明を受けたこと、ありませんか?
治した金属の中が、なぜ虫歯になるのでしょうか?
疑問に思ったこと、ありませんか?
「金属を接着剤でつけたはずなのに、どうして虫歯になっちゃうの?」
「接着剤は、どこに行ったの??」
今日はそんな疑問にお答えしてみたいと思います。
金属の中が虫歯になる理由①:さびるから
保険で用いられる金属は色々な成分が混じって作られている合金です。金・銀・パラジウム・ニッケル・・・、色々な成分が含まれていますが、その中の約50%は銀です。
その銀が経年変化によりさびてきます。
シルバーのアクセサリーを思い出してください。長年愛用していると、だんだん黒っぽくなってきますよね。あれはさびてきているからです。口の中の保険の金属も、同じ現象を起こします。
さびた部分に隙間が生じ、そこが虫歯の原因菌の蓄積部分になり、その結果そこから虫歯になります。
金属の中が虫歯になる理由②:たわむから
次にここでクイズです。
人間の咬む力ってどのくらいあると思いますか?
①50グラム
②500グラム
③5キログラム
④50キログラム
咬むときの力は、その人のほぼ体重と同じくらいと言われています。
なので体重50キロの人だと、食事の時などに歯には50キログラムの力がかかっています。
そして人が1日で咬む回数は約1500~2000回、およそ1800回くらいです。
つまり歯に対して、50キロくらいの力が毎日1800回くらいかかっているということになります。
その力に対して保険の金属では、性能的に限界があるということも少なくありません。
顕微鏡レベルの話になりますが(虫歯も歯周病も細菌が原因です。なので当然顕微鏡レベルの話になります)、強い力(つまり咬む力)がかかる度に金属はたわみます。
下の写真を見て下さい。アナログ感満載の手書きでごめんなさい (__)
下向きの矢印が歯にかかる強い力(咬む力)です。この力が加わる結果、金属にたわもうとする力がかかり、両端に浮き上がろうとする力が発生します。
それが毎日1800回、1週間で約12600回、1か月で約54000回かかります。
口の中の修復物って、とても過酷な状況にさらされているんです。
たわむ結果、そこに隙間が発生し虫歯になります(上の①と同じですね)。
またそのたわもうとする力がかかる結果、詰め物(金属でもプラスチックでも)が外れやすくなります。
金属の中が虫歯になる理由③:硬いから
②と少し矛盾するように感じる方もいらっしゃると思います。
硬いから、というのは金属そのものが硬いからという理由ではなく、歯の硬さと金属の硬さが全然違うから、ということです。
歯と金属に先ほど書いた非常に強い咬む力が1日何回もかかります。
その結果、歯も金属もすり減ってきます(これも顕微鏡レベルの話ですが、歯は咬むことによってすり減ります)。
歯と金属の硬さが全然違うので、すり減るスピードに差が生じます。
その結果、そこに隙間が発生し、そこから虫歯になったり金属が外れる原因となります(上の①②と同じですね)。
ちなみに、歯の硬さときわめて類似しているのがゴールド(金)の金属です。なのでゴールドの詰め物(かぶせ物)は治療後虫歯の再発は非常に低い、と昔から言われています。
金属の中が虫歯になる理由④:汚れるから(磨き残しがたまりやすくなるから)
説明を捕捉します。
全く治療したことが無い歯に比べて、金属であってもプラスチックであっても保険材料の場合、同じように歯ブラシをしていても、磨き残しがたまりやすくなってしまうんです。
なので当院が、経過観察で様子を見ることができるうち(見ていても大丈夫なうち)は、できる限り治療をしないことを推奨しています。
歯ブラシの仕方を改善しなかったり、今まで歯科医院で定期的なメンテナンスをしていない方がメンテナンスの習慣を取り入れない場合は、結局治療後は治療前と比べ日常生活は何も変わらないわけです。
変わらないどころか修復物が入ったことで、その部分は治療前より磨き残しが付着しやすくなってます。
その結果、治した金属の部分がまた(今まで以上に)虫歯になりやすくなります。
保険治療で用いる金属の寿命(統計より)
インレーと呼ばれる部分的な金属は平均生存期間は約10年(要は寿命が約10年ということです)、クラウンと呼ばれる歯全体を金属でかぶせるものは約9年だと、とある文献に書かれてありました。
そしてインレー、クラウンの10年後生存率予測はそれぞれ67.5%・55.8%と表記されていました。つまりどちらの金属でも、虫歯治療して入れた金属のうち、約2本に1本は10年もたない可能性が高いということです。
他の学会が出したデータでは、インレーの平均生存期間が約5~6年、クラウンだと約7~8年というものもあります。
話少しそれますが、2つのデータに大きな差があるのは、個人的な推測ですが、データとして抽出された人々の口の中の清潔度(磨き残しの量)は統一にできないからだと思われます。
逆に言えば、口の中のプラークコントロールが、いかに大切かということが分かる結果なのかもしれません。
ここまで読んで下さった皆様、ご自身の毎日のケアでしっかり磨き残しを取り切れていますか。
セルフケア(ご自身の日々のケアのことです)だけで清潔に保てる自信、ありますか??
即答でYes! と言えることができないのなら、ぜひ定期的に歯科医院で健診やお掃除をする習慣をつけることをご検討下さいね。
今日は、この辺で。。。
最後まで読んで下さってありがとうございました。
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